「まよなかの ウィンター・パーティ」 作・ツルカワヨシコ
雪に閉ざされたぼくたちの学校
冬に包まれたわたしたちの寄宿舎
ときは冬休み
みんな迎えに来たパパやママと
春までおうちに帰っていく
そんなみんなを見守るぼくら
そう、わたしたちは帰る家のないこども
春が来るまで ぼくたち わたしたちは
この寄宿舎で冬を過ごす
でも 寒くはないよ
うん さみしくはないよ
ぼくたち わたしたちには
とっておきのパーティがあるんだから
真冬の満月の夜とだれが決めたのか
それはみんな知らないむかしむかしの話
そのひと夜が とっておきのパーティの夜
その日はベットを抜け出して
真夜中 大広間に集合だ 先生たちもしらんふり
わたしたちはこころをこめて花を編む
その日に向けて
ぼくたちはとっておきの石で勲章をつくる
その日に向けて
パーティの日はだれもがともだちになるのがルール
いつもは おことわりのあの子とこの子も
ウィンター・パーティの日は仲良しなんだ
とうとうやってきたパーティの夜
この夜のためにとっておいた
とっておきのおやつを片手に
パジャマ姿でパーティの始まり
最年長の女の子と男の子が手を取り合って
たからかにうたげのはじまりを告げる
「ようこそ冬 ようこそパーティへ
ゆめゆめ 喧嘩だけはするではないぞ!」
シーツをかざして駆け回る
ろうそくの光の下 おしゃべりしあう
おやつを分けあいっこしあう
笑って 笑って
それは それは 楽しい夜なんだ
大広間のあちこちではお花と勲章の
交換が始まっているよ
女の子から男の子に
男の子から女の子に
「ありがとう きみのこと大好きだよ」
みんな うれしそうに受け取り礼を言う
女の子から女の子に
男の子から男の子に
「ずっと ともだちになりたかったの」
「あのときのこと ごめんね」
みんな うれしそうに手を取り合う
やがて、日が昇り パーティは終わりを告げる
みんなベットにお帰りなさい
今年のパーティはおしまい また来年
眠たげな目で みんな さようなら
だけどあれは夢じゃないんだ
手に残ったお花 勲章 そして思い出
ぼくたちは それを胸に冬を越える
わたしたちは それを手に春を待つ
それは秘密のパーティ
とっておきのウィンター・パーティ
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